久しぶりに泊った旅館の部屋は、相部屋だ。
親しい制作会社社長の息子Wと、知らない女の子と、ボクが川の字で寝ている。
なぜ寝ていたのかが疑問で、ボクは起き上がり他の部屋を見て回る。
各階が非常に入り組んだ、複雑な設計ですごい人数のお客でごった返している。
お伊勢参りの旅篭のようだ。
人々をかきわけてボクは何かを探している。
突然、テレビの収録の仕事があることを思い出す。
そうだ、バスに乗らなくちゃ・・・
外へ出ると、とんでもない田舎ではあるが、なぜか青山の町にも似ている。
アメリカ製のインディアンの自転車をバス停に置いて、バスに乗ろうとすると、大勢のばあさんたちが前の老人専用バスに乗ろうと、ゆっくり歩いている。
おんぶしてやろうと思ったが、ばあさんの数が多すぎてやめた。
ボクもそのバスに乗り込んで2百円を機械に入れる。
受け皿に1円やニセ硬貨や30円玉がある。
ボクは自分のおつりの30円を取り、それを物欲しげな、ばあさんに渡す。
とにかくばあさんだらけのバスの中、ばあさんの佃煮だとつぶやく。
バスの中にテレビ朝日のプロデューサーで、相変わらず人の良いT岡さんがいた。
なんだか牛乳の当たり券のようなものをボクにくれた。
「河村ちゃん、どこまで行くの?」
と聞かれたので、ボクはチャンバラのまねをして、武道館と答える。
実はその近くの千代田スタジオへ行くのだ。
スタジオの収録が終わったら、今日は何処へ泊ろうか、などと考えていたら目が覚めた。