1年前の記憶が黄泉帰ってきた。
緑あふれる郊外の道を路線バスに乗っている。
切符が入ったバッグを提げたバスガールがいる。
時代は昭和。
あれは1年前だった。このバスで独りの少女を見かけた。
細くて小さくて清楚な少女だった。
少女は途中の駅で降りた。
その少女に魅かれるように、ボクも後を追った。
目の前には赤っぽい明治の館のようなレンガ造りの家。
その横手から緑の道が続く。
人の姿は見えない。
少女の後ろを歩いて行くと、小さな谷間があり橋が架かっている。
下を流れる川幅は5メートルほど・・・。
見下ろすと川の水は上質なシルクのように透明だ。
鋭い魚が泳いでいる。
何匹かいるその30センチほどの魚は、背中に硬質な茶色のタイルのような模様がある。
ドイツ鯉か?
いつの間にか、ボクは橋の上で少女を抱いて、魚の姿を追っている。
橋の上を人が通る。
間断なく通る。
人の目が突き刺さり、快い発情感。
ボクを見つめる少女の幼い、妖婦のような瞳。
泣いているのか。
否、少女の頬の上には、涙の形のアザがあった。
得も言われぬ、艶っぽいアザが。
(夢の中で、1年前の記憶と言う不思議なシチュエーション。現の世では全く逢ったことのない少女。ボクの中でどうやって映像を創ったのだろう?)