深夜の街を独りで歩いている。
ビル街…マンハッタンのウォールストリートのようだ。
ぼんやりと灯る街灯の明かりが黄ばんでいる。
微かに霧も出ているようだ。
道に何かが落ちている。
しゃがみ込んで見つめると、なにか心臓のようなものだ。
かすかに鳴動しているのだった。
「こんばんは」
突然、その心臓がボクに話しかけて来た。
「やぁ、こんばんは」
ボクも挨拶を返した。
「寂しかったな」
心臓がつぶやく。
ボクはその心臓をそっと、手でつかみ上げた。
柔らかくて、温かくて、淡いピンク色だった。
「一緒に来るかい」
ボクがそう言うと、心臓はうなずくように動いた。
ボクはシンセサイザーの作曲家なのだ。
地下の録音室にいる。
ミュージシャンたちをコンダクトしているのだが、今夜はタクトが上手く振れない。
オレンジのジャケットの内ポケットに、あの心臓がいるからかな、と思う。
「スーツは純白がいいよ」
「自然体でいったらいいよ」
心臓が、可愛い声でボクに喋っているのだった。
(ここまでしか、夢の記憶が無い。あの心臓は誰だったのかな?そしてボクたちは、どうなってゆくのかな?脚本にしてみたい夢だったなぁ。夢っていいなぁ。)