「四谷赤坂麹町 ちゃらちゃら流れるお茶の水、粋なねえちゃん立ちションベン。
白く咲いたがユリの花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。
どう、どうなの、買ってけ、ドロボー!」
神社の境内だ。
盛岡八幡宮のようでもあるし、鶴岡八幡宮のようでもある。
なんだか、夏祭りは八幡さまの雰囲気が好きで、露天の準備をしている。
焼そばの鉄板をセットして、炭の種火を起こしながら、テキ屋の口上を練習だ。
ボクは料理には拘りが強いので、焼そばの火は炭火と決めているのだ。
「テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降れば良い」
今日は晴天だ。
さぁ焼くぞ。
ボクの焼きそばは、なんたって天下一品。
ソバは札幌、キャベツは信州、肉は秋田で、ソースは愛媛。
そこにアワビだ、エビだ、イカだホタテだ、持ってけドロボーってなもんだ。
ボクは衣装も拘るから、ジーンズはD&G、アニエスベーのタンクトップに真っ白な
晒しの腹巻き、足元はCROCSのビーサンだ。
頭にゃもちろんお約束の豆絞りの鉢巻。
これぞ日本の伝統文化。
そこにジャパナイズドな西洋ファッションの融合だ。
焼そばが焼けたぜ。
屋台の前は黒山の人だかりだ。
若いおなごばっかりだ。
良く見るの、うちの学校の女学生だよ。おいおい。
「なに?美翔祭のグランドテーマだと?」
ここ文化祭の会場なのか?
まぁ何処でもいいや、突っ走れ!
「さぁさぁ焼けたぜ、お立会い、田へしたもんだよ、蛙のションベン。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし。見下げて掘らせる井戸屋の後家さん。ゴホンゴホンと婆さんが、磯の浜辺でねぇあなた・・・ねぇあなた・・・」
その次の口上を思い出していたら、目が覚めちゃった。
(ボクはテキ屋さんが大好きで、高校生の頃は江の島の祭りのアルバイトで焼きそばを売っていた。たまに人手がいなくて、焼トウモロコシ屋もやった。懐かしい夢を観た朝は幸せだね)