河村シゲルの夢か現か日記

夢は自分自身で創る芸術作品、脚本・演出・セット・キャスティングなど全て1人で担当してます。「無意識の思考を意識に伝えようとしているのが夢」だと、あのフロイトが言っています。ボクは最近、夢を毎日見ています。だからもう一人の自分探しの旅のつもりで夢日記を書き続けることにしました。

ヨットレースは洋上の格闘技!だから好きだなぁ。

「スタボー!スタボー!」

右サイドから、こっちのヨットの進路に突っ込んで来た80フィートのレース艇のクル―どもが叫んでいる。

すげースピードだ。

風速が15ノットだから、船速が45ノットは優に出ている。

フィンランドのスワン社が作った、世界でも有数のレース艇だ。

突っ込んでくる、そのヨットはスターボード(右舷)に風を受けているから、海の上では権利艇なのだ。

これは国際ルールで、ポート(左舷)に風を受けている船が進路を譲らなければならないのだ。

こんな場合は、左サイドに進路をとって、相手を回避するのだが・・・。

左サイドには小島の岩礁があり、海図の上では、この辺りには海の中に暗礁もある。

暗礁にぶつかれば、キールの深いヨットはひとたまりもなく転覆してしまう。

キールの破損は、ヨットの命とりなのだ。

スピンネーカーセール・トリマーのボクは、ラットを握るスキッパーの指令を待った。

通常ならジャイビングして、対抗してくる相手を避ける。

一か八かを狙うなら、タッキングして相手の進路のすれすれのコースをとる。

スキッパーの指令は、クルーの命がかかっているのだ。

「タックするぞー!」

スキッパーが叫んだ。

ここでのタッキングは、ポートサイドのジムトリムに、一気に責任がかかってくるのだ。

ボクはスピンシートを若いクルーに渡して、ジブセールをスタンバイする。

この、何とも言えない恐怖とスリルを求めて、イタリアまで来たのだ。

「タックー!」

スキッパーの叫びに、ボクは解放されたジブシートを、力の限り引き込む。

ジブセールに風をはらませたら、クランクを力一杯回して、船のスピードをつけるのだ。

ふと前を見ると、対向してきたデッカイ80フィートのレース艇のバウが目の前にあった。

間一髪、相手を避けたのだ。

相手のクル―たちが、頭上から大声でわめいている。

言葉は分からないが、罵詈雑言の限りを尽くしているにちがいない。

「エイケガッソッ!どんなもんだい!」

ボクも覚えたてのイタリア語の汚い言葉を叫んでやった。

ボクたちの進路を奪って、岩礁に激突させようと右サイドに偏って走った来た、そのヨットの前には暗礁がある。

「おーい。あぶねーぞー!ジャイブしろー!」

しかし、遅かった。

ものすごい轟音と共に、80フィート艇が粉々に飛び散った。

大空に舞い揚ったセールが、パラシュートのようにフワフワと落ちて来た。

夥しい程のセールの落下であった。

口に飛び込んできた飛沫がしょっぱかったなぁ。

(やったぁ。久しぶりのヨットレース。イタリアのサルディーニア島での国際レースみたいだ。夢の中のような、進路を奪い合うシーンもレースでは、良くあることだ。

その格闘技にも似た瞬間が、ボクは好きだなぁ)