オペラ座の舞台そでからレンガの階段を降りると、楽屋へと続く道。
水溜りもある湿度の高い、無風の空間。
楽屋のドアーの隙間より差す、木洩れ陽のような紅色の光。
ドアーノブの下にある鍵穴。
それが、突然ディフォルメされボクの目の前に現れた。
息を殺して鍵穴を覗くと・・・。
美しい裸身をさらしたマドンナが、化粧鏡に向かっている。
ボクに潜む卑猥なる本能が息づき始める。
そのエキストラオーディナリーな空気感が伝わったのか・・・
彼女の白い裸身の背中が、薄く紅色に染まる。
欲望のカリカチュア・・・
化粧は美しきオンナをカリカチュアする。
それは、欲望の追求なのだ。
決して単なる写実ではない。
大いなる欲望のアバンギャルドなのだ。
鏡に映された自らの裸身に、見惚れながら化粧する可愛いオンナの姿態。
密かに行われる、その行為にボクは制作意欲を掻き立てられるのだ。
文字と言う絵の具で、オンナを描き続けるのだ。
美しきオンナは背中に鍵穴を持っている。
それを、覗く快感・・・
覗かれる快感・・・
鍵穴を覗きながら、猛烈に文字が書きたくなって、飛び起きた。
(彼は誰れ時、飛び起きてパソコンに向かい、短編を書き続けている。夢が創作意欲のモチベーションになる時があるのだ。もっとも今、書いているのはコメディだけれども…(笑))