誰もいないエディタールーム。
いつもなら編集エンジニアーがいるはずなのに・・・
ボクは独りでディレクターズチェアーに座って、何台かのモニター画面を見つめている。
映像素材は、海の中やジャングルや大都会や・・・
これをどう繋ぐのか・・・
あれっ。
収録台本と編集コンテがないぞ。
あれっ。
その時、5台のモニター画面が突如、一台のパソコンになってしまった。
そうか、そうなのか・・・
このパソコンで、独りで編集しろってことか。
ボクは一体全体、誰の為にテレビ番組を作っているのだろうか?
この世界で50年、ずっと視聴者の為にと番組を作ってきたよ。
でも、それが業界の大きな反発を食った。
村八分にされた。
「テレビの客は視聴者じゃない。」
「テレビの客は、クライアント、提供してくれる企業様だ、とくいだ」
業界用語で、提供スポンサーを「とくい」と言うのだ。
お得意様のことだ。
この10年、特にテレビ局はスポンサーの顔色ばかりを見てる。
「あーこんな仕事やりたくねー」
ボクはパソコン台をひっくり返してみた。
突然、ボクの前に再び、数台のモニター画面が並んだ。
文字がスーパーインポーズされている。
「放送法 第4条・・・・・」
これは笑える。
放送人なら、まず最初に研修を受ける文言だ。
こんなの守っている奴はいない。
経営者が守らせない。
罰則もない。
集団的自衛権の文言のように、曖昧な日本語の羅列だ。
よし、これを逆手に取った番組を作ってやろうじゃないか・・・。
ボクの隣の椅子に、いつの間にかエディターの秋葉ちゃんが座っている。
長年、ボクとコンビを組んでくれた編集者だ。
なんだか身体中が燃えて来たぞ。
ボクは楽しくなって目が覚めちゃった。
(昨日は一日、部屋に籠って、テレビ界を舞台にした小説を書いていた。それでこんな夢に・・・。
放送法第4条。
① 公安及び善良な風俗を害しないこと。
② 政治的に公平であること。
③ 報道は事実を曲げないですること。
④ 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
民放もNHKも同じだ。
テレビ局のお客様は、提供スポンサーであって、視聴者ではない。
だから、みんなの為に番組を作っちゃいないのだ。
それが現実。
でもね、NHKの提供スポンサーは視聴者だよね。
NHKは放送法を守っているだろうか?
守っていると言うなら、お聞きする。
6月29日 新宿で男性が、日本では珍しい焼身自殺をした。
集団的自衛権の閣議決定に対する抗議行動だと言う。
これをNHKはニュースで報道しなかった。
民放は1分弱のニュース扱い。
大新聞社はこぞって、小さなベタ記事扱いだった。
アメリカCNN。フランスAFP通信。イギリスBBC・・・他。
世界が東京発のトップニュースで報道していた。
あーこんなテレビ界に誰がしたのだ?)