久しぶりに彫刻家のディビットに会った。
相変わらず、南太平洋の孤島で遊行の暮らしをしている。
髪はブロンドの長髪。
いつも裸の逞しい上半身は、小麦色に輝くイギリス人だ。
彼は今、一抱えもある大きな黒雲母の石を見つめている。
今朝、海岸で拾ってきた石だ。
その石の中に何かを見つけ、鉄ノミとハンマーを握りしめた。
「デビ、何を見つけたの?」
「恋人同志のイルカの愛撫だよ」
彼は二匹のイルカのカップルを、黒雲母の中から取り出しす為に、ハンマーを鉄ノミに打ちつけた。
一週間後には、素晴らしいイルカのアート作品が現れることだろう。
アーティストの創造は、作りだすことではなく、見つけだすこと。
ディビッドに出会った頃、彼が言っていた言葉が印象的だった。
少し離れたコテージの中で、クリスチャン・ラッセンが大きな青く輝く月面をジャンプするイルカをキャンバスから取り出した。
アーティストの創造は、如何に素敵なものを発見するか・・・。
よし、ボクも原稿用紙の枡目から、面白い言葉、文章、ストーリーを発見しよう。
見つめていれば、必ず浮かび上がってくるはずだ。
良し、早く帰って仕事しよう。
楽しみだなぁ・・・。
(これであわてて、夢から現の世界に戻ってきてしまった。即刻、パソコンを前にして、4時間経過。小説原稿は遅々として進まぬ中、このブログ日記を書いているのだ。
今日こそ、原稿用紙の枡目からストーリーを見つけ出してやる!)