ボクは今、太極拳をしている。
衣装はお気に入りのブルーの表演服・・・
ジャッキーチェンとお揃いだ。
場所は・・・なんだか林の中の空き地のよう・・・
太極拳の極意は・・・
動静の機。
陰陽の母。
人、剛にして、我、柔なる。
うーん、そうは言っても難しい。
呼吸を正し、静かな動きの中に、激しさを秘めるのだ。
理屈は分かっていても、なかなか身体が安定して留まってはくれない。
その時である。
樹上から、木陰から、草の中から・・・
ばらばらと現れた白い木蘭服の男たち・・・
やばい!
一斉にボクに襲いかかってきた。
人、剛にして、我、柔なる。
正拳で来た相手の腕を閃通背でかわす。
得意の関節技なのだ。
突っ込んで来た数人を、二起脚で跳ね飛ばす。
これもボクが得意な二段蹴りなのだ。
なんだか、ボクは強いのである。
相手の連中は、相当に怯んでいる。
それは、ボクが「先のけい」を会得しているからである。
これは太極拳の力の原理なのだ。
相手の攻撃を目で見るのではなく、心で見る。
耳で聞くのではなく、心で聞くのだ。
ジャッキーがボクにそう教えてくれた。
自分の持つ五感の総合力として、第六感を感じるのである。
そうだ、これだ!
この感性を応用すれば、相手の攻撃の意思を未発の内に知り、自己を常に主導の位置に置いておけるではないか・・・。
これだ、これを仕事に役立てよう。
やったー。
太極拳をやっておいて無駄ではなかったぞ。
さぁ、仕事にでかけよう!
なんだか、興奮して起きちゃったよ。
(なんだか、暑くて寝苦しい朝、飛び起きてしまった。これは使える。この極意は応用できる。急いで夢のメモを採った。今、こうして書いていても確かに「先のけい」は使えるね。プロ野球のイチロー選手は、この極意を会得していると思う。彼はボールを目で見ているのではなく、心で見ているに違いない。あのバットコントロールは、それ以外には考えられない。))