南の風に頭を押さえつけられて、小さくなった波がしらが立つ浜辺。
松の砂防林の先にある、浜木綿に囲まれたボクの砂山。
何か、思考を巡らせて魂の遊行を楽しみたい時に、やってくるボクの隠れ家。
夜明けだ。
左手の東浜の空が金色に染まっている。
江の島はまだシルエットだ。
ふと、気が付くと、隣の砂山に男がひとり佇んでいる。
細身の長身、あごひげ、鋭いが優しいまなざし・・・。
ウサーマ・ビン・ラーディン
アルカイーダの指導者。
サウジアラビア生れの彼は、民族を愛し、家族を愛していた。
でも、他民族、他宗教国家からはテロリストと呼ばれていた。
NY貿易センタービル爆破の首謀者とされ、十年後に暗殺された。
「テロリストって、なんだろう?」
ボクは隣の砂山の男に聞いた。
「無意味な戦いの、片一方のことさ」
「じゃ、今、ガザ地区を無差別攻撃しているイスラエルは?」
「まだ、国際間ではイスラエルがかろうじて正義らしいいね」
「ガザの難民たちがテロリストかい?」
「正義と不正義。善と悪。南と北。体制と反体制、右派と左派、人間は常に二手に分かれて、レッテルを張られるのさ」
「70年前の戦争でも、日本人はテロリスト扱いだったんだろうね」
「そりゃそうだよ、さて、チェ・ゲバラと酒でも飲むかな」
世界で最も危険な男と言われたビン・ラーディンは小さく笑いながら砂の中に潜りこんで行った。
人はなぜ、してはいけないことをしてしまうのか。
人間はもう、二千年以上も、この繰り返しで歴史の上塗りをしているだけだ。
すっかり明けた空の上で、ビン・ラーディンとチェ・ゲバラが笑ってらぁ。
(寝酒代わりに頂いた「仕事に効く教養としての世界史」と言う本を読んだせいか、
なんとも面白い夢だった。でも成熟度のあがった、この社会は益々、現実を虚構化したり、日常を演劇化して人類の生命を維持するしかないのだろうか?と、ふと思う)