多摩川の土手の上。
ジョギングや犬の散歩や釣りからの帰りのおじさんも行き交う、いつもの夕景。
西の彼方には夕焼けに染まる富士山。
ボクは土手の斜面に草枕で想う。
「テロリストと革命家・・・その径庭・・・」
「それを決めるのは、その時代の権力者だよ」
突然、ボクの隣に男が現れて言った。
「テロリストと革命家・・・俺は両方呼ばれてたよ」
その男はダークなシャツに、同じ色調のベレー帽をかぶっている。
ベレーの真ん中に小さな、でも鮮やかな赤い星ひとつのデザイン。
長髪に口ひげ。
「チェ・ゲバラ」・・・だ。
キューバ革命に尽力し、英雄視されたが、南米の他国ではテロリストと呼ばれた男。
「ある日の真実が、永遠の真実ではないよ」
ゲバラが呟いた。
「この国にも革命が必要だな」
「ボクもそう思ってるよ」
「革命家になれよ」
「なれるかな}
「革命家に大切なのは、人間への愛、正義への愛、真実への愛、愛のない革命はないよ」
「ボクには愛はあるはずだ」
「人間はダイヤモンドなんだよ。ダイヤはダイヤでしか磨けない。人間を磨くのも人間だけなのさ」
ぼくはもう、ゲバラの言葉に圧倒されている。
「革命・・・か。」
ボクの出来る革命は文化革命しかない。
「よし、ボクは文化の革命家になるぞ!、革命家になるから・・・」
と、良いかけて隣を見ると、チェ・ゲバラはすでに居なかった。
「ちぇ!ベレー帽を貰おうと思ったのに残念!」
この自分の台詞に自分で受けて、目が覚めてしまったのだった。
「ちぇ!」
(8月は原爆や終戦やお盆・・・なんだかそんな雰囲気の中での夢だ。
昨日の夢に登場した二人の男に感動したので、再びゲバラが現れてくれた。ボクは若い頃、チェ・ゲバラが大好きで、彼と同じベレー帽を英国の百貨店で買ってかぶっていた。今の長髪も口髭も、その名残なのだ。よし、今こそ人を磨く革命家になろう!)