窓際の会議室。
眼下には、新宿から池袋のビル群が見える。
「で、今週のクローズアップは、なんだい?」
酒好き、相撲部出身の異色の無頼派ディレクター、桂木邦彦が聞いた。
「オッパイのクローズアップでいこうかと・・・」
構成作家の腰乃マキオが、つまらなそうにつぶやいた。
「カメラは乳頭の先にズームアップして、引いていこう」
プロデュサーの池田文治が、嬉しそうに指示する。
ここは、この人々のオウンドメディア・・・インターネットテレビ局だ。
みんな、数十年もキー各局のテレビ放送に携わり、引退した筈だが、ネットテレビの自由な面白さにはまり、自分たちでテレビ局を作ってしまったのだ。
「みなさーん、会議してる場合ですか!オンエアーです。早くスタジオへ来て!」
この局で、一番態度のでっかいADの大鳥ジェーンが怒鳴りこんで来た。
まもなく、何でもかんでも売ってしまう通販番組の「ジャパナット・タンタカタン」
が放送なのだ。
今日の商品は、おしゃれ棺桶に戒名のおまけつきらしい。
みんな、実に生き生きと動き回っている。
このテレビ局は、勝つな・・・
そんなことを感じながら、飛び起きたのだった。
(いいなぁ、ボクの小説の中のキャラクターたちが、生き生きと動き始めた。
今、インターネットテレビ局を舞台にした、コメディ小説を書いているのだけれど、どうにも、いまいち、登場人物たちが生き生きしていなかったのだ。けれど、この夢の中に現れた彼らは、、躍動していた。個性があった。これなら面白い作品が書けそうだ。)