今年の夏は、まだ海に一度も行ってないなぁと。
朧な頭の中で、想いを巡らせていたら。
いつの間にやら、鵠沼海岸の砂丘にいる。
ここは、ボクの故郷の定位置だ。
つくづく惜しい。
つくづく惜しい。
松林の中で、つくつく法師が泣いている。
行く夏が、短すぎて悲しいのだろうか。
己の命の儚さに、泣いているのだろうか。
悲・悲・悲と悲しい声で、かなかな蝉も日暮らし林の隅で泣いている。
夏は楽しい季節と同じ分量だけ、悲しい季節でもあるんだね。
夕焼けの浜辺に佇む女性は、みんな世の中に小さな背中を向けている。
その間を、シオカラトンボが、忙しそうにすり抜けて行く。
早く伴侶を見つけないと、赤トンボに奪われそうな気がして・・・。
暮れなずんで、江の島がシルエットに霞んで行く。
もうじき、静かなボクの海が戻って来るんだね。
夏休みが終われば、ね。
(鵠沼海岸のボクの砂丘はもうない。50年以上も前の景色だ。子供の頃、夏休みの海が嫌いだった。他所から海水浴に大勢きて、ボクの海を汚すから。ボクは9月1日の海が大好きだったなぁ)