彼方の荒々しい岩山から続く道は、大草原を横切っている。
秋の日の、陽なたくさい枯れ草の匂い・・・
これがボクのシルバーグレイの空間だ。
何処からか、忍び泣くような胡弓の音が流れてくる。
このシルバーグレイの空間には、人々の涙や笑い声や呟きが、あふれている。
ここまでは、先人が造ってくれた道・・・
この先は、ボクが創る道・・・
シルバーグレイの空間が、そこにあるだけ・・・
・・・・・・・・・・・
あれから、何年、歩き続けてきたのだろう・・・
振り返ると、ボクの後ろには曲がりくねった道が見える。
懐かしい道が・・・。
ボクの前には、シルバーグレイの空間。
耳を澄ませば、大空は語りかけてくれるが、一瞬にして声は消えて行く。
不規則な揺らぎの風が、ボクに纏わりつく。
命と言う時間を切り売りして、代償を得ている惨めさもある。
この時間を、使い切ったら死ぬつもりではある。
この先は、益々自分自身を見失いながら、歩くのかもしれない。
でも、何が起ころうとも、自分の意志だけで、きっぱりと前に進む覚悟もある。
ボクはいつも、現実と同時に虚構を生きている。
どちらを優先させるのか・・・
もしかしたら、それが人生の楽しみなのかもしれないな。
シルバーグレイの空間・・・
どこまでも延びる道のり・・・
(なんだか、独りで呟いていた夢だった。シルバーグレイの空間は、ボクが放送界に入った時、最初に感動したラジオドラマのタイトルだ。こんな作品を作りたいと思った。この作品はシルクロードを舞台にしたドキュメンタリードラマだった。)