街の雑踏を歩いている。
騒音と嬌声と隠微な匂いのする街・・・
その時、どこからかボクに注がれる視線を感じた。
危険な視線だ。
まずい。
狙われている。
ボクはまだ見えぬ敵から身を隠さなくてはならない。
ボクを狙っているのは3人の男・・・
しかもやくざだ。
見えないけれど、直感で判断した。
友達のSPがこんなことを言っていた。
街中で因縁をつけられた時のSPの心得。
まず謝る。
それでも駄目なら、再び謝る。
それで駄目なら、土下座して謝る。
そのうえで駄目なら・・・殺す。
ボクの気持ちに、追われている重圧がのしかかる。
3人のやくざが追って来る。
でも、待て・・・
ボクは夢の中で考える。
ボクはやくざに狙われる理由が見つからない。
やくざな友達はいるが、みんな良い奴で仲が良い。
右翼だって、テキヤだって、左翼だってみんな仲が良い。
ボクには誰からも狙われる理由がない。
これは夢だ。
夢に違いないと、夢の中で考えて安心した。
安心したら目が覚めた。
目覚めてもう一度、考えた。
誰かがボクを狙っているだろうか・・・
(久しぶりの恐怖と緊張の一瞬だった。街の中で命を狙われていると感じたのだ。
夢であればいいと、夢の中で念じていた。街と言うのは、時にそんなドラマティックな感覚を呼び覚ましてくれるんだな。)