夢は、一晩に数本見るものだ。
ただ、最初の夢は次の夢によって消去され、二本目の夢が上書きされる。
でも、また次の夢によって、再び消去される。
消去された夢を、朝になって思い出すことは不可能に近い。
脳のハードディスクの奥に仕舞いこまれるからだ。
しかし、今朝はこの夢の上書き保存に成功したのだ。
最初の夢・・・
海の家のようなヨシズ張りの中で、みんなで幕の内弁当を広げている。
すると、その時である。
「その、ホタテ…美味しそうですね」
と、ボクの弁当を覗きこんで、声をかけて来た人がいた。
振り返ってみると、その人は・・・
なんとなんと、昭和天皇陛下であった。
「差し上げましょうか・・・」
ボクは、ホタテの焼き物を献上しようとした。
「ああ、大丈夫です」
昭和天皇は、手にした折り詰めをボクに見せてにっこりほほ笑んだ。
突然、島倉千代子さんが、ほほ笑みながらボクの前にきた。
「人生いろいろ」の手の振付を見てほしいと言う。
ボクは、そこはこうしてだの、そっちはああしてだの、アドバイスしている。
次は、ジョギングをしていた。
市谷から四谷に向かう、坂道である。
後ろから、学生マラソンの選手たちが追い付いてきた。
ボクは、抜かされたくないのでスピードを上げた。
自分でも、驚く速さである。
先行のランナーまで、ごぼう抜きをした。
まさに、ランナーズハイ状態なのだ。
そのまま、選手でもないのにゴールインしてしまった。
ゴールは上智大学のグラウンドだった。
ボクは、その勢いで走り幅跳びにも緊急参加してしまった。
踏切板から飛ぶと、なかなか着地しないのだ。
そして、とんでもない所・・・
藁ぶき民家の土間まで飛んでしまった。
そこには、ボクが主宰する作家集団 RIPOの仲間たちが待っていた。
(朝、結構疲れて目が覚めた。とにかく夜中にメモを取らずに、全ての夢を上書き保存で記憶することにチャレンジしたからだ。実を言うと、島倉千代子の後に、もう一本見た夢があるのだけれど、残念ながら思い出せない。完全に消去されてしまったらしい。)