ボクの目の前に裸婦がいる。
黒髪のヘアースタイルは丸みを帯びたボブ・・・
眉毛は細く鋭く・・・
鮮烈なアイラインの内に光る、青白い瞳・・・
その瞳より更に蒼く輝く全身の肌・・・
彼女は自堕落にチェアーに半身を委ね、コンクリートの窓辺にいる。
窓の外は漆黒の海・・・
アルプスからのダウンブローな風に、波がしらが寒い。
物憂い憂鬱の時間が、ねっとりと流れている・・・
遠い彼方へ向かっている瞳・・・
そこは無防備な少女たちが集う、表裏あるソサエティ・・・
絶望の時代が、音もなく近づいている。
上空に流れる異様な形状の雲が象徴している。
絶望へのドアーがいつも開いている時代・・・
その隣にある希望の階段に、誰も気が付かない。
冷たいコンクリートの窓から、物憂げな瞳を投げだす裸婦・・・
その蒼白い瞳の中に、紅く燃える一輪の炎・・・
その時、ボクは自覚した・
ボクの目の前にあるのは、シュールなフェリックス・ラピスの描く絵画だ。
彼の作品を見つめていると、詩が浮かぶ・・・
言葉が蘇生してくる・・・
ボクは再び、物憂く気だるい惰眠の虚構の中へ沈み込む。
心地よい綿雲に包まれている・・・
(リアルで現実的な仕事が多かった日には、ナイトキャップに絵画集をパラパラやって、フィクションの世界に身を放りだして眠る。名画からは想像が生れ、夢の中の創造につながる。これもそう、将に夢か現かのボーダーを行きつ戻りつしているようなのだった。)