ダークブラウンの重厚なドアーをノックする。
ふいにドアーが全開されて、部屋の中に入り込む。
アールヌーボーな装飾品の中でも、ひと際の存在感・・・
それは、アールデコなクロゼット。
その引き出しを開ける。
突然、様々なものが飛び出してくる。
ボクが、探していたものたち・・・
愛する人に捧げる、心ある言葉・・・
描きたかった風景画のデッサン・・・
プロットで筆が留まっていた舞台の脚本・・・
人生の終焉を飾る歌のイメージ・・・
欲しかったジャケットの色合い・・・
今、飛び出してきたものこそ、ボクのインスピレーションなのだ。
インスピレーションをボクのものにする為には・・・
ボクは無意識の心のドアーを少しだけ開けておく。
このインスピレーションという、楽しい個人的な戯れ・・・
それは、ボクがボクだけに与えた遊び・・・
ボクは、生きている。
たった一度だけ生きている。
そしてもう二度とは、この命の世界に戻っては来ない。
何て不思議なボクの人生・・・
遊びをせんとや生まれけむ
戯れせんとや生まれけん
ボクは、生きている。
たった一度だけ生きている。
ボクだけのインスピレーションのままに・・・
(この夢の原点は明快だ。昨夜、横浜開港記念会館でコンサートの司会をやった。
大正6年に建設された素敵な講堂ホールだった。中世のオペラ座のような空間・・・
あの感動が、そのまま夢にインスパイアーされたのだろう。)