雑踏の中を、人々が行き交う。
ここは…
新宿駅西口の交番前広場・・・
ボクもその、群衆のひとりだから・・・
自分の前後左右に視線を配りつつ歩く。
蠢く群衆の中で、自分の位置をキープし、
いつ生ずるかもしれない、騒乱に身構えている。
いつも、そうして生きて来たような気がする。
絶えず、目と気を配って生きている。
それが、生きものの当然の姿かも知れないが・・・
別の生き方も、あるのではないか。
無我・・・
我を棄てる・・・
我を虚しゅうする・・・
我を消す・・・
ボクは、雑踏が広角で見える位置に立ち、群衆を見つめた。
何処にも、誰にもピントを合さず、心も合さず、ただ静かな境地で見つめて見た。
ボクの視野は定点カメラになった。
主観を交えず、ただ客観で雑踏を捉えている。
すると・・・
いつもは単なる雑踏としか見えていなかった景色が一変した。
怪我をしたのか、片足を引きずる青年・・・
行き先を思案しながら歩む老婆・・・
肩がぶつかって怒る中年男・・・
戯れながら二人の世界だけを楽しむカップル・・・
遅れて舞い散る、秋の木の葉・・・
人々の股間をすり抜けて歩く鳩・・・
どう見ても絵に描いた不倫のようなふたり・・・
ストローでドリンクしながらの女性・・・
立ちつくす虚無僧姿の托鉢僧侶・・・
待ち合わせ相手を探す数人の人々の交差する視線・・・
突然、転ぶおじさん・・・
気の毒そうに見つめつ貴婦人・・・
紛れ込んだ仔犬・・・
追いかける警察官二人・・・
いつもは気がつかない、この素晴らしき映像が、見えた。
無我・・・
何と言う境地・・・
ボクは、ボクの定点カメラの性能にうっとりしている。
(ブラボー!将に大晦日から元旦に行ったYoutubeでの24時間神社初詣ライブ中継・・・これが定点カメラのドキュメンタリーだった。制作者の主観を入れない映像作品。それを創ってみたかったのだ。近頃、作者の主観が邪魔な作品が多すぎるから・・・)