小高い丘から石畳の路が海へと下っている。
彼方に見え隠れする海は湾になっていて・・・
小舟が幾つか浮かんでいる。
路の左右は、煉瓦造りの家並みが続いている。
家の庭先にはレモンの樹・・・
街路樹はプラタナス・・・
ふと見ると、道端のベッドに美しい裸婦が・・・
両腕を挙げて枕にして豊かな裸身を風に晒している。
石畳を歩く女性たちもみんな裸身・・・
想い思いのポーズで歩いている。
美しい街だ。
ボクはうっとり、全ての景色に見とれている。
恍惚の温もりが、身体に充満する。
街に男の姿はない。
しかし・・・
ボクは居る。
何処にいるのだろう?
この情景を見ているのだから、ボクは何処かに居るはずなのだが・・・
ボクはボクを探している。
その時、街を横切る高架鉄橋の上に蒸気機関車が・・・
真っ白な煙をドーナツのように吐いている。
幻想の世界へ行く、上りの列車だ。
間もなく恍惚の停車場に着く。
また独り、新たな男が降りて来るのだろう。
そうしたら、ボクは折り返しの下りの列車で現実へ帰らなければならない。
(夢と現・・・幻想と現実。情報の大洪水の時代に幻想は薄れる。でも、オリジナリティやクリエイトには幻想がなければならない。現実の中に幻想を探す・・・この旅が生きる楽しみなのだと思う。)