久しぶりに、親友のマリオとゴルフの打ちっぱなしにいる。
本当に、久しぶりだ。
マリオは世紀末に自殺したのだから・・・
でも、なぜだ?
なぜなんだ?
とは、ボクは聞かない。
他人の人生観なんて、本人以外は分かりゃしないのだから・・・
ただ、みんな分かった振りをしてるだけだから・・・
「21世紀が、こんなになるとは思わなかったよ」
マリオが、例の人懐っこい丸い目で言った。
「無知な政治家、独善の経済人、狂った街、野蛮な大人たち、民衆の憎悪、知識人の無関心・・・」
そう言いながら、マリオは溶けていった。
ハンス・ベルメルの清濁が混沌とする挿絵の中に・・・。
「俺は、先に死んで良かったよ」
マリオは、そんな呟きを残して・・・
確かに、マリオと遊んだ20世紀は、まだ世界中に民主主義の姿があったよ。
人々の知性や理性が、暴力を越える力があったよ。
世界中の女性たちや子供たちが、その平和に夢を託す姿があったよ。
21世紀・・・
それが、見果てぬ夢であることに気付いてしまった。
あきらめの空気が、世界の空を覆っている。
ボクは、マリオの自分勝手な自殺を、とても責める気にはなれない。
(マリオは、ボクの数少ない親友のひとりだ。彼は新しいものが好きで、六本木に日本初のディスコクラブやカフェバーを造った男だ。二人で一世風靡セピアのプロデュースなどで暴れたなぁ。マリオが生きていたら、きっと毎日、時代とケンカばかりしているだろうな。)