再び、ヨットに乗りたくなって洋上に
小型のディンギーは逆風を切り裂いて南下する
いつの間にか夕日が海面に落ち、いきなりの闇夜がきた
下田の灯台の灯りも見えなくなり、神津島の明りもおぼろ
銭洲の岩礁に気をつけよう
新月は潮の引きも大きい
俺はヨットがなぜ好きなのだろうか
それは、順風より逆風の方がスピードが出るからだ
それは、俺の人生にも似ている
俺はいつも、順風を避けて逆風の中に身を置いている
金や地位や権力を失おうとも、その姿勢は変えない。
逆風こそ俺の居場所だ
その時だ
急に風が止まった
凪だ、べたなぎだ
無風はヨットの大敵だ
自分の意志に関係なく潮流に流される、果てしなく……
世の中だってそうだ
世間の逆風におどおどしてる奴が多いけれど、無風の方が怖い
それは、自分が世の中から無視されているのだから
無風は辛い、怖い、絶望だ
俺は無風のヨットの上で、ボクシングのファイティングポーズをとる
唇を噛みしめる
唇のはじから血が流れても、涙は流さない
(今朝の夢は、結構いいドラマの主役になっていた(笑)。ヨットマンがいつしかボクサーになっている処がボクらしいね。ボクサーの練習は辛い。マウスピースをくわえていても唇から血を流すこともある。それが涙の代わりだってことはボクサーでなければ分からないことだ。)