タンタンタンタンタンタンタンタン・・・
むき出しのモーターの布のベルトが冷却機械を回している。
タンタンタンタンタンタンタンタン・・・
これはボクの夏の音
アイスキャンディ屋の音
鼻にスーッと染み込む甘く切ない香り
出来たてのアイスキャンディの香り
5円払うと、おじさんが冷凍器の中からスッと一本抜いてくれる
赤いのも青いのも白いのも、みんなハッカの同じ味がする
ボクはキャンディの先をそっと舐めながら歩く
かじったらすぐになくなってしまうから・・・
横浜の伊勢佐木町7丁目
ボクの生れた町
歌も楽しや 東京キッド
いきでおしゃれで ほがらかで
右のポッケにゃ 夢がある
左のポッケにゃ チューインガム・・・・
レコード屋から美空ひばりが聞こえてくる
町中に歌が飛んでいる
ボクはアイスキャンディを舐めながら7丁目の道を走って渡る
注意しないと自転車に轢かれるから・・・
夏でも涼しい一六地蔵の5段しかない石の階段
ボクはいつものように3段目に座ってアイスキャンディを舐める
目の前を警笛を鳴らして、アメリカ進駐軍のジープが疾走している。
子供たちが、その後ろを群がって走る
いつも群れに入れなかったボク・・・
まだ、小学生に満たないボクの真夏の一日・・・
(マスコミが戦後70年だ、原爆だと一過性の大騒ぎだから、ボクまでつられて・・・
ボクの記憶装置には戦争の思い出もある。小さかったので怖さはない。賑やかさと焼夷弾の明るさと、生で食べた茄子の美味さがある。)