二次元の夕闇を夜行列車が走る
湿った温風が吹きすさぶ停車場
夜行列車が停まる度に男たちが乗ってくる
ひとり、ひとり、またひとり…
うす暗い車内
重たい空気とたばこの煙り
額に滲む汗
疲れ切った男たち
夜行列車はそんな男たちの吹き溜まり
人生の夢や空間や方向性を失った男たち
昭和40年代のモノクロの世界
やがて夜行列車は三次元の暗闇を切り裂くように走る
男たちの瞳に光が灯る
夜はある一瞬、時間が制止することがある
ふと人生の悲哀も怨恨も愛情さえ忘れ去る空間がある
時間というべきか・・・
男たちの夜行列車が終着駅に着いた
四次元の街・・・
すべてが静止している…ように見える街
車も犬も全裸の女たちも…
すべてが静止している
時間を忘れても許される幻想の世界なのだ
真夜中の一瞬だけ
恋人たちが、あちらこちらで抱き合っている
即物的な重圧だらけの喘ぐ三次元のエロスではない。
自由な時に包まれた、官能の四次元のエロスの世界。
男たちの魂は解放され、帰りの夜汽車に乗り込んでいる。
再び、三次元の懐に還る。
(夜、一瞬だけ時間が静止する時がある。ふと時間の存在を忘れる四次元空間。
エロティックな幻想の世界へひとりで入り込む自由。この世に夜の存在感に感謝するひととき…それが夢。)