大きな乳房のような大理石にノミで何かを打ち込んでいる
ノミを振るう男はボクだった
ボクの行為をボクが客観的に見つめている
ノミで打ち込んでいるのは、作品の絵コンテだ
監督のボクにしか分からない絵コンテ
コンテの中に役柄の性格が刻まれていく
そしてキャスティング
誰を起用するのか、それも明かしたくない
ボクの心の中だけにある
作品のタイトルは決めてある
『Functional・官能』
女性の肉体に潜む神秘性を描くのだ
色彩は原色にこだわる
今、誰が恋愛に神秘性を感じるだろう
誰がセックスに陶酔の神秘性を感じるだろう
セックスをどれだけ科学的に解明しようと…
医学が女性の潤いを発汗作用に過ぎないと解説しようと…
男にとって、女性は神秘的な存在なのだ
官能とは神秘性そのものなのだ
ボクはそれを描き切る
モジリアニの裸婦
キスリングの裸婦
ボクは映像でそれを創り上げるのだ
撮影現場にスタッフ達を波のように引き裂いて主役の女優がきた
ボクの前で立ち止まり、目を合わせた彼女は男装だった
ボクは黒いジャケットの彼女を抱きしめて言った
いい作品が撮れそうだよ、君となら…
(強烈な夢でこれは忘れてなるもんかと、寝ながらシーンを何回も反芻していた。
明け方近くに、飛び起きて書き起こした。次の夢は陳腐だった。夢は次の夢に上書きされてしまうので、書き残さなければ記憶が消去されちゃうのだ。)