それは小川というより小さな谷間のせせらぎ
青い木々と雑草が茂った小さな窪地をかき分けるようにして流れている
その小川には、夏の終わり頃にわくら葉の舟が流れる
子供の頃、ボクはそのわくら葉が不思議だった
枯れ葉ではないのに、呉藍色に染まった葉
たまに真っ黄色の葉もある
それが決まって、夏の終わりにボクの小川に流れてくる
わくら葉が、小川の淀みに立ち止まると、紅い爪の弁慶蟹が石の間から顔を見せる
泥鰌が出てきて、水面でひとつ息をして急いで潜っていく
早く戻らないと、枝にとまったカワセミに捕まるからだ
やがて、淀みに浮かんだわくら葉が動き出す
ボクはそれを追ってせせらぎを歩くのが好きだ
そして、いつもの待っていた可憐な君が…
黒いシースルーの衣装で、あどけない飛翔…
長くは飛べずに、すぐ石にちょこんと止まる仕草が可愛い
ボクの大好きな薄羽カゲロウ…
それは、誰にもあるような季節の替わりめ
ただの夏の終わりの想い出…
(昨日、帰宅したら小学校の同窓会の通知が…そんなことからの連想だろうか。
この小さな小川は、子供の頃ひとりで毎日遊んでいた。人間よりも蟹や泥鰌やカワセミや薄羽カゲロウが友達だった。わくら葉(病葉)を見たくなったな。)