モノクロームの空間
小雨に周囲の林が煙っている
葦の茂った小さな沼の畔り…
木の株に蒼白いシルエットが座っている
番傘を差したシルエットは河童のような風体
「自分の心の声を聞き逃すなよ」
そう呟いたように、ボクには聞こえた
シルエットは尚も無言の呟きを…
ボクにはそれが聞こえる
「ハングリーでいい」
「愚かでいい」
「先のことなんか誰にも見えはしない」
「直観と運命の流れに竿を挿せ」
「運命は偶然ではない。今までの選択と行動の結果なのだ」
「膝まづいていた奴らが、いづれは頭上に足を乗せてくる。盛者が皆な味わう悲哀さ」
「人生への問いかけは、自分からはやるなよ。向こうからしてくるから」
「どんな人間にも使命がある。それを発見し実現することが、生れて来た意味だ」
ウーム…
なんだか人生読本に良くある台詞の棒読みだな
まぁ、いいや
こいつはボクに、迷ったら野に出て勉強をやり直せと言いたいのだろう
分かった、分かったよ
明日ね
ボクはにっこり笑って、夢の中でもう一度、眠ることにした
(沼の畔りに傘をさして座っていたのは、蒼白い河童だった。河童の実物は知らないが
多分、小島 功さんの漫画で見た河童だ。河童はいろいろ喋っていたが、ボクはひとつだけ心にとめた。「自分の心の声を聞き逃すなよ」)