新宿駅の西口辺り
ボクは小田急ハルクのベランダから雑踏を俯瞰している
大群衆の中に、男と女の圧倒的違いを感じている
男は誰も彼も、抑圧された社会機構の中で、自己を失って見える
女は誰も彼女も、社会の歪みに気付き自己を主張し始めているようだ
女の自己主張…
それは、取りも直さずエロスの開放に他ならない
冷淡な都会の女を演じながらも、時に娼婦のまなざしを見せる
その一瞬は、自由なエロスへのあこがれ
自由への回帰願望なのだ
エロスと歪んだ社会機構の谷間を彷徨っている女たち…
たまに好色そうな中年紳士が声をかけるが、それはエロスではない
それは、自分勝手なグロそのものなのだ
カリカチュアの鬼才、ゲオルゲ・グロッスの描く風刺画そのものだ
今こそ、社会機構からの奴隷たちを解放しよう
歪められたエロスを取り戻そう
自由で健康なエロスを…
人間性への回帰だ
人間への愛情と憧れを求めて…
文明や道徳や権力に押し込められてはいけない
人間は本来自由なんだから…
エロスの楽しさを失ってはいけない
…と、ハルクのベランダで演説しているボクを、誰かが見ている視線を感じる
優しい温もりのある顔で…
(エロティシズムとグロテスクを混同しているのは、多くは男たちではないだろうか。
近頃、あちこちで開催される春画展には女性たちが詰めかけている。江戸時代の大らかなエロス…これこそが抑圧され続けた現代人からの逃避であり、人間性への回帰なのだろう。)