まるで弓の矢のように鋭く
寝床の中に冷たく蒼い月光が射しこんで来て
あたりは霜の降りた草むらの如く
真っ白に光っている
まるで李白の詩にある「静夜思」の情景だ
ならばボクもそれを真似て
窓を開け放ち、遠くの山々を眺望し
コウベを垂れて故郷を想う
この浮世は夢か現か分からないままに過ぎてきた
「そっちへは行くな」
「それはやめておけ」
「我慢しろ」
「手をだすな」
ボクの中には、いつも引きとめるボクがいて
ボクの中には、いつもそれを無視するボクがいる
そして散々に失敗をしてきた
だけれども、今さら人生の再生ボタンを押す気はない
ボクにはコケツマロビツの人生が似合う
ハッピーエンドは求めない
予定調和もいらない
勝ち負けではない勝負もあるさ
ただ今日に遊び、明日の風を楽しみたい
ボクは、その辺の石コロだけれど
生ある限り、動き回る石コロだ
石も転がっていりゃ苔も生えない
月光はいつの間にやら雲間に隠れていた
ああ。人生は面白きかな
(冬の夜なのか、年末だからか、メランコリーな気分になるのは…。再生がこの時代のキーワードだそうだけれど、人生には再生はない。戻しても同じ失敗をまたやらかすのが人間なんだ。心理学でも精神医学でもない。それは歴史が証明している。)