西方橋の下を片瀬川が流れている
揺れる水面にボクの記憶も浮かんでいる
橋のたもとに初恋が引っかかっていた
子供の頃を想い出す
何も言いだせなかった、あの頃
悩みの後には、いつも楽しみがあったな
日暮れが近づき、龍口寺の鐘が鳴ると
夜のしじまが忍び寄ってくる
いつの間にか、月日は無謀に流れ
ボクは取り残されている
そうだ、好きな本を小脇にかかえて
片瀬川の畔を歩いて見よう
ボクの一生に出会えるかも知れないから
だって、この川はボクの憧れ
ボクの郷愁
ボクの全てを浮かべて流れている
ボクの憂いも水の中に沈んでいるはずだ
誰だって一本や二本の自分の川をもっている
そこには橋も架かっているだろう
セーヌ川のミラボー橋
クワイ川の戦場に架かった鉄橋
ハドソン川のブルックリン橋
テムズ川のロンドン橋
そんな立派じゃなくていい
小さな川と橋があればいい
そこで、自分の人生が流れているのを見つけるんだ
町のビルの谷間にも川は流れている
温かくささやかな望みを浮かべて…
(行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
古来より先人たちも、川の流れに人生を見つけ、例えてきた。
なんだか時代を越えてもみんな一緒が、とてもいいね)