5%のブドウ糖溶液と0.9%の生理食塩水500ccを腕に受けて
その作家は想う
病と闘う覚悟はできた
死の意味を自らにも問うている
解決のつかない自問自答
凄まじくも弱弱しい心との葛藤
あの日から死は
日常的にいつも傍らにいる
自分がもはや世間から離れ
今まで生きて来た社会を遠くから眺めている
そんな心境にはまだ、なっていない
でも、いずれはなるのだろう
まだまだ強い生への執着があるのだ
その作家には美学ほどの美意識がある
することではなく、しないこと
する闘いではなく、しない為の戦いであること
諦めることではなく、諦めないこと
なのに夜、眠れない事だけで
世の中に取り残された気持ちになるのはなぜなのか
自分の作品が売れたのは、人格に対してではないことを悟って
文化と言う名の仮面の商売に疲れ果てた
500ccの水滴を身体に入れて作家は想う
全てに宿ると言う様々な神々も入っては来ないかと…
アニミズム…
その、あいまいさが欲しい
科学万能の時代だからこそ、あいまいさが欲しいのだ
その作家は独り喋り続けている
(夢に登場した男は、ボクが長く兄事していた作家だった。
人間の仕草の変化を見ることが好きだった。その些細を作品にしていた。あの作家が今の社会を見たらどう言うか…時々ふと想う)