「確かにやくざの看板は外しましたが、
男の看板まで外した訳ではありません。
そんな舐めた口を利いてもらっちゃぁ困ります」
ダークなコンチのスーツをばしっと決めた、その男
黒ぶちの眼鏡の奥に光る三白眼
大抵の人間は、これですくみ上がる
その男が、小さな頬笑みで見つめている
昭和のやくざ 安藤組組長 安藤昇さん
もっとも安藤組は、当時のマスコミがつけた名前で
正確には東興行
安藤昇さんは組長ではなく社長だった
意地 情け 魂…渡世の掟を大切にしていた
信条として、自らに課した掟だった
男として大嫌いなものは、卑屈…
卑しい精神は許さなかった
一刻の傍観は百刻の後悔
自分を鍛えるのは、また自分と信じた
男はレッテルではない
レッテルはいらない
肩書き 地位 立場
全て取り払った後に男の精魂は試される
安藤昇さんは、男の戦いにも厳格な掟を自らに課した
掟に外れて敵を倒しても、男の誇りにはならない
やがて彼はヤクザから足を洗い
映画界のトップスターにまで昇り詰めた
まるで、その名前のように…
(今日、東京の青山で安藤昇さんの「お別れ会」がある。沢山の映画監督や俳優仲間が集まるだろう。しかし、マスコミ報道は多分されない。馬鹿な政治家のレッテル保存会見のほうが重要だと、馬鹿なマスコミは判断するだろう(笑))