片瀬川に架かる鉄橋。
左側は土手と畑、右側はこんもりとした森・・・
どうやら江ノ電の鵠沼駅の先にある鉄橋だ。
川を越えると、右に大きくカーブして、その先は片瀬駅だ。
ボクは、その鉄橋の枕木をひとつひとつ飛び越しながら、対岸の片瀬に渡ることにした。
誰も見てはいない。
景色は子供の頃のままだ。
風は海の磯の香りだ。
きっと、片瀬川が上げ潮で海の水が逆流してきているのだ。
上げ潮の時は、ここでもフグや黒鯛が釣れるんだ。
江ノ電は単線だから、鎌倉行きが鵠沼の駅を出ると、江の島の駅で上下線がすれ違ってから、藤沢行きが鵠沼に来る。
その間、10分くらいの時間があるのだ。
その間に鉄橋を歩いて渡るのだ。
子供の頃、友達とよくやった度胸試しで、ボクの得意技だ。
よし行くぞ。
やっほー!
鉄橋は昔のままで、欄干も何もなく、枕木の間隔が・・・
えーっ!広すぎるのだ。
一個飛び越すのに、えらく時間が掛かってしまう。
こんな筈ではなかった。
昔はもっと、走るように渡れた筈だ。
その時、江ノ電の警笛が聞こえて来た。
畑の向こうから、右にカーブしながら一両の江ノ電が横に揺れながら走ってくる。
やばい!走れ!走れ!
こんな時は川の中に二つある、橋脚のどれかに枕木の間から飛び込んで、頭上を通過させる秘密の技があるのを思い出した。
枕木はあと三本、これを飛び越して、よし橋脚だ。
ボクは1メートル四方ほどの橋脚のスペースに飛び込んだ。
飛び込んで待ったが、江ノ電が来ない。
なんの音もしない。
その内、妙にオシッコがしたくなった。
やばい、電車が来る前にやってしまおうか・・・と考えてたら・・・覚醒。
(テレビで江ノ電の特集を見たせいかな、子供の頃の思い出が・・・。片瀬駅は今では湘南海岸公園駅と改名している。江ノ電の鉄橋渡りは小学生時代の度胸試しの遊びで、何度もやったけれど、大人に注意されたことはなかった。今なら新聞ネタか・・・どっちの時代が良いんだろうね)