2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧
ここは洞窟の中だろう。 ロウソクの灯りに照らされた岩肌に想い出がある。 岩の窪み、滴る水滴の響、匂い・・・ 江の島の弁天様の洞窟だ。 洞窟の奥には、彼岸へ渡る三途の川の波止場がある。 松明が夜空を焦がしている。 今年も、ここで何人かの友を送った…
指を鳴らして、男がハスキーな声で唄っている。 マック・ザ・ナイフ 三文オペラ すると、ここはロンドン・・・ いや、違うぞ。 どうみても東京の六本木だ。 色男のギャングであるメッキーも可愛い少女ポリーもいない。 ジャックナイフを握っているのは、ボク…
越中おわらの古風が染みついた家並み。 その軒下をすり抜けるようにして、胡弓の音がむせび泣いている。 男衆が唄う。 女衆が踊る、すげ傘に想いを隠すようにして。 過ぎゆく夏を追いかけるように、風の盆が街を進む。 それを物陰から、見つめる男と女・・・…
ボクの眼はなんだろう。 景色が超広角な鳥瞰で見えていたのだが、突然・・・ 凄い勢いでズームアップして、小さなアブラムシの中に分け入る。 ボクはいったい誰なのだろう。 カメラが勝手に客観視して、ボクの全体像を見せる。 そこには蝉の抜け殻がいた。 …
摩訶般若波羅蜜多心経 ここは、もしかして銀座のライブハウス「タクト」かな。 ボクの最も好きな所で、高校生の時は毎週末、通い詰めたものだった。 そのステージにボクが呼ばれた。 司会の大橋節夫さんが、何か唄えと言うのだ。 ボクはにっこり笑うと、唄い…
夏の夜空を見上げている。 空にはこんなに星があったのかと驚くほどの満天の星空だ。 宮沢賢治の理想郷イーハトーヴもかくやと想わせる眩い光の世界。 ポッカリ!。 突然、音を立ててボクの心の引き出しが、ひとつ開いた。 歌を忘れたカナリヤは、うしろの山…
何処にでもありそうな、商店街の角を曲がって出くわした。 オジサンたちの群れだった。 みな一応にゆるめのジーンズに黒い皮のベルト。 開襟シャツに野球帽。 メガネをかけて、手にはカメラ。 出っ張った腹にはウエストポーチ。 これが50人もいるのだ。 これ…
夏がゆく ボクの夏がゆく この小川のせせらぎにも晩夏の気配がする。 ススキの茎が遠慮がちではあるが、空を目指している。 草むらから、犬が飛び出してきた。 ボクの目は、突然、その犬の顔にズームアップした。 その顔は笑っていなかった。 ボクが求めてい…
今年の夏は、まだ海に一度も行ってないなぁと。 朧な頭の中で、想いを巡らせていたら。 いつの間にやら、鵠沼海岸の砂丘にいる。 ここは、ボクの故郷の定位置だ。 つくづく惜しい。 つくづく惜しい。 松林の中で、つくつく法師が泣いている。 行く夏が、短す…
適当に込んでいる電車の中・・・。 ボクは座って、何気なく乗客を観察している。 いつものことだ。 物書きにとって、電車の中は恰好のネタ集積場なのだ。 無表情でスマホに夢中な会社員 大声で世間話の、おばさん軍団 物憂げな女子高生 テキヤの風貌をしたお…
彼方のアルプスから吹き下ろしてくる一陣の風。 大草原の草花たちは癒されている。 そこへ東から少年が・・・ 南から娼婦が・・・ 北から画家が・・・ 西からヤンママが・・・ 集まってくる。 いつもは、まるで接点のない人々が、沢山集まってくる。 昨日も…
南からの夜風が温るい。 小さな漁港の港内には、はだか電球がひとつ灯っているだけ。 その電球の明りが照らす海面には、光に寄って来た小魚とクラゲがひとつ。 数隻の小型漁船が舫っている。 兄弟の漁師が、伝馬船で釣りの支度をしている。 二人には以前、会…
カルシューム×2.5 マグネシューム×4 この積算が100以下は軟水 100以上は硬水 ならば、この谷川の清水は硬水だな。 どうりで美味い。 飲むそばから身体中に染み込んでくるようだ。 ボクは子供の頃から、大自然のエネルギーを受け止めて生きてきた。 夏は一日…
NYの45番街かな。 なんだかネイビーの無機質な街並み。 ちょっと、ビルの陰には危険な匂いがする。 そこそこの女史がハイヒールで歩いているが、竹馬に乗っているように前のめりで似合わないな。 良く見ると妖艶な娼婦のようだ。 好色そうな中年男が、細身の…
窓際の会議室。 眼下には、新宿から池袋のビル群が見える。 「で、今週のクローズアップは、なんだい?」 酒好き、相撲部出身の異色の無頼派ディレクター、桂木邦彦が聞いた。 「オッパイのクローズアップでいこうかと・・・」 構成作家の腰乃マキオが、つま…
風の吹きすさぶ停車場には、沢山の紙が舞い散っている。 どの紙にも、びっしりと文字が・・・ 手紙なのだ。 誰が誰に出したものなのか、誰も知らない。 それが錆びついた線路の上に、雪のように落ちて積もっている。。 告げたいことがあったのだろう。 教え…
懐かしい場所だ。 横浜南区の庚台。 高台にあるボクの家の庭は、自給自足の畑になっている。 おばあちゃんが茄子をひとつもいで、手のひらできゅきゅと揉んでボクにくれる。 ボクはいつものように、それにかぶりつく。 フワッと、生茄子のかほりが口中に広が…
夜。 スーパームーンに照らされた沖には、ウサギの飛び交うのが見える。 低気圧が通過したばかりなので、海鳴りがまだ残っている。 誰もいない海の家。 後姿の男。 それが誰だかは、分かっている。 不死身のマリオ。 でかい交通事故で背骨を折ろうが、刃物で…
夢想・・・ 真夏の夜の夢。 ここは何処だ? パリのシャーウッドの森。 または、良く手入れされたメルボルンの林。 いや、カリブのサン・サルバトルの密林だ。 夜空を焦がすような、松明の明り。 心が燃えつくしてしまうようなラテンの4拍子 ラテンパーカッ…
小雨に煙る山の中腹。 鬱蒼とした森の中に、大きな岩が鎮座している。 神の岩倉。 其処に集まる現代の悪霊たち。 時空を乗り越えて、生者と死者が共有している。 和魂と荒魂が共存している。 いや、共有や共存ではない。 ここでは、その区別がないようなのだ…
高層ビルの窓辺から、大都会の煌めく夜景を見つめている。 あの眩い灯りの中に、どれほどのエロス(性)とタナトス(死)が蠢いているのだろう。 花は美しい生殖器。 それはエロスとタナトスの黙約なのだ。 生きることが、死を約束させられている限り、恋を…
ほんのわずかなハエ(南風)の洋上。 ディンギーのメンスルを外し、ジブスルをスパンカー代わりにして、漂っている。 月明かりのラグーンに島影が見える。 ボクのヨットはするすると島に吸い込まれていく。 岩場の一角に洞窟があって、ヨットは躊躇すること…
多摩川の土手の上。 ジョギングや犬の散歩や釣りからの帰りのおじさんも行き交う、いつもの夕景。 西の彼方には夕焼けに染まる富士山。 ボクは土手の斜面に草枕で想う。 「テロリストと革命家・・・その径庭・・・」 「それを決めるのは、その時代の権力者だ…
南の風に頭を押さえつけられて、小さくなった波がしらが立つ浜辺。 松の砂防林の先にある、浜木綿に囲まれたボクの砂山。 何か、思考を巡らせて魂の遊行を楽しみたい時に、やってくるボクの隠れ家。 夜明けだ。 左手の東浜の空が金色に染まっている。 江の島…
病院の待合室。 なんだか雰囲気からすると、赤坂病院だな。 「河村さーん、入院でーす」 いきなり看護師の遠藤さんが、親しさを無表情で包んだ、いつもの顔で叫んだ。 「遂に入院か・・」 ボクは覚悟を決めた。 と、いうよりなんだか安堵した。 ボクは長い人…
ねっとりとした闇の中を、滔々と流れる川面 暗い橋の上に人影が・・・ それは釣り師だった。 長竿を鞭のように鮮やかに振って、ハゼを釣っているのだ。 その釣り師の竿が突然、弓のように、いや満月のようにしなる。 大鯉だろうか、草魚だろうか・・・ 釣り…
サウナルーム ここは多分、六本木のTCKCCCのサウナだろう。 ボクには分かる。 なぜならば、裸でサウナに入っている客の半数は身体に彫り物があるのだ。 この街は、昔から渡世人が多い。 数組が縄張りで入り乱れている。 サウナの入り口には、刺青お断りと書…
テレビスタジオの副調整室 通称サブコン 卑下して屋根裏なんて呼ぶこともある。 でも、本当はここで映像制作の全てをコントロールしているのだ。 ボクは、サブコンのディレクターズチェアに座っている。 目の前には5台のモニター画面がある。 ボクは映像スイ…