「企画力なんてものは、不意に頭の扉が開いて、引き出しが出て来てさ、その中にイメージやカラーやワードが見つかるんだな。
こいつがインスピレーションなんだよ。この自分だけのインスピレーションは、君たちの頭の無意識のドアーを少し開けておかないとだめなんだよ。」
これは、何かの本で読んだ言葉を、適当に綴り合わせたものだろうけれど、なかなか良いこと言うじゃんと、思いながら喋っている。
窓から首都高速が見えるから、日本脚本家連盟スクールの放送作家クラスの授業だ。
生徒は見慣れない奴が沢山いるが、真ん前にドーンと座っているのは、若林くんだ。
相変わらず、ギロッとした眼でボクを見つめている。
「先生、先生のインスピレーションは、いつ出るんですか?」
若林くんが鋭い質問をする。
「そんなもん、分かってりゃ苦労しないさ」
この答えじゃ、この男は納得しない。
「でもさ、プロはいついかなる時でも、出さなければいけない。その為には、日頃の勉強、情報のインプットが大事なんだよ」
ありゃ、若林くんが寝てる。
やばい、ボクの授業はつまらないんだな。
「精神とは何だと思う?」
ボクは寝ている奴らに質問する。
誰も答えない。
「精神は目に見えない大自然だ」
「何でですか?」
若林くんが、むっくり起きて質問する。
「ありゃなんでだっけ?」
えーと、なんだっけ?えーと、えーと・・・
頭が混乱して、覚醒した。
(寝入り端に見た夢だった。すぐに目が覚めたので、自分の講義の台詞を枕もとの紙にメモして、再び寝た。朝起きて、読み返して、へーこんなこと喋ったんだと可笑しくなった。)