ウイスキーをシングルで喉に流してから、バタートーストに塩を振ってかぶりついた。
美味い。
これがボクたち「湘南エドワーズ」の朝飯だ。
せいちゃん、おけ、よこ…いつもの仲間たちがいる。
いつもの鵠沼の海、東急レストハウス前が、ボクたち「湘南エドワーズ」のショバなのだ。
ボクたちは毎日ここで、たむろしている小学校からの遊び友達だ。
それは、学校が変わってそれぞれが高校生になってからも、こうして続いている。
左手の小田急ビーチパレスの前には、ライバルチーム「鵠沼シャークス」の連中がいる。
奴らは宿敵だ。
シャークスは軟派。
エドワーズは硬派。
両チームは、波乗りの腕前を競いあうライバルなのだ。
今朝は南風に波頭がつぶされて、乗れる波が出来ていない。
「けっ、あくでしようのねぇ波だへ!」
せいちゃんが、いつものように砂浜に唾を吐きだしながら言った。
「まだ、スケもいねーし」
「マージャンでもすっか」
ボクたち4人は、煙草をくわえ、砂浜で麻雀卓を囲んだ。
向こうの「鵠沼シャークス」の連中は、可愛い女の子も入れて、ラグビーをやっている。
その時だった。
規則正しい、波音が一瞬消えたかと思うと、凄い高潮が一気に押し寄せて来た。
ボクは荒れ狂う波に押し倒され、流され、海中を転げまわって翻弄された。
海の中で、どっちが上だか下だかわからない。
鼻の中に海水が入って、こめかみが痛い。
こんな時は、暴れずにじっとしていると、身体は自然に海面に浮上できる。
それは子供の頃からの、海の生活の中で分かっている。
ぽっかり海面に出ると、せいちゃんも、おけも、よこもいた。
みんな、さすがだ。
しっかり波乗り板を持っている。
「さぁ、いくべー!」
ボクは皆に声をかけて、次のでかい波を待ち受ける。
楽しい。
すげー楽しい。
おい、まさか・・・
そんなこと考えたら、目が覚めた。
(本当に夢は最高だ。これは55年前のボクだ。今、鵠沼の海に東急レストハウスも小田急ビーチパレスもないけれど、当時はあった。まだ、日本にサーフボードが一枚もない時代だ。ボクたちは板を削って、自分の波乗り板を作っていた。洗濯板で代用する奴もいたっけ(笑))