クロマキー撮影をするようなブルーバックの幻想的な空間。
霧が立ち込め、水琴窟に響くような水滴の音。
小麦色をした裸婦が眠っている。
その上半身は、シュルレアリスムの画家、マックス・ワルターのコラージュ。
ボクは圧倒されて、近づく事が出来ない。
でも、もっとその寝顔を見てみたい衝動を抑えきれない。
彼女のうしろ…ブルーバックスクリーンの陰にいくと・・・
そこにはコラージュされていない、美しい裸婦が眠っていた。
まだ少女のあどけなさが残る裸婦は、スクリーンに投影され、コラージュされていたのだ。
まるで、オズの魔法使いのようだ。
美しい裸婦の寝顔に性的な衝動を抑えきれない。
これがユングやフロイトのいうリピドゥなのか。
この欲望こそ、本来のボクのエネルギーの本体なのだ。
創作意欲の根本なのだ。
ボクは眠っている裸婦の見ているであろう夢を想う。
その寝顔には、美への幻想や陶酔感が溢れているのだ。
多分、彼女が起きている時は、その存在さえ気付かないエロス・・・。
意識の束縛を離れた今、のびのびとエロスの空間に遊んでいるのだろう。
ボクは、その場をそっと離れた。
なぜだろう?
自問自答した。
彼女の陶酔の邪魔をしたくないから・・・
ちょっと待て・・・ボクも今、エロスの空間にいるんじゃないか・・・
彼女に指一本触ることなく・・・
あわわっ・・・
慌てて戻ろうとしたが、目が覚めちゃった。
(エロスを失った人間に心理の創作活動はありえない・・・たしかフロイトは言っていた。その文言が好きで時々思い出すが、今日は夢の中にフロイトやユングが登場してきた。おもしろい。夢の奥義をもっともっと堪能したくなった。眠りの世界は最高だね。現実よりも