病院の待合室。
なんだか雰囲気からすると、赤坂病院だな。
「河村さーん、入院でーす」
いきなり看護師の遠藤さんが、親しさを無表情で包んだ、いつもの顔で叫んだ。
「遂に入院か・・」
ボクは覚悟を決めた。
と、いうよりなんだか安堵した。
ボクは長い人生この歳まで入院の経験がない。
病院のベッドで寝たことも、点滴すら打ったことがないのだ。
だから、入院と言われる時の恐怖心がある。
いったい、どんな病気になるのだろうか・・・。
ボク程の健康体の奴でも、そんな病気に対する恐怖はあるものなのだ。
気が付くと、ボクは身体中に包帯を巻かれていた。
ミイラのお化けのようである。
そんな恰好で病院内を歩き回っている。
すれ違う医師やナースや患者さんたちは、ボクに無関心である。
全身に包帯をしたミイラが歩いているのに、みんな無関心なのだ。
ボクは不安になってきた。
これから何処へ行けば良いのだろう。
放射線科、CT,血液検査、MRI,透析室・・・
看板は色々あるが、何処へ行って良いのか分からない。
病院の廊下で途方にくれた。
ちょっと待て・・・
ボクの病名はなんだっけ?
これが一考に思い出せない。
あれ?
あれ?
「おーい、遠藤さーん!」
「おーーーーーい!」
今朝も自分の発する大声で目が覚めたのであった。
(今朝も寝苦しくて、夢の中の大声で目が覚めた。しかし入院の夢は、夢の中で嬉しかったのを覚えている。遂に入院したぞ!って感じだった。ボクは人の看護はたくさんやっているけれど、入院の経験がまだない。実はこれまで、医師に3回ほど入院を勧告されたけれど、すべて断ってきているのだ(笑))