南からの夜風が温るい。
小さな漁港の港内には、はだか電球がひとつ灯っているだけ。
その電球の明りが照らす海面には、光に寄って来た小魚とクラゲがひとつ。
数隻の小型漁船が舫っている。
兄弟の漁師が、伝馬船で釣りの支度をしている。
二人には以前、会ったことがある。
九州の博多湾だった。
そこに住む、兄弟の漁師とチャリコの底引き網漁をやったことがある。
博多弁で言うアッパラパンな素敵な兄弟なのだ。
それが、なぜここに・・・
その時、ボクは背後に人の気配を感じて身がまえた。
大柄な屈強な男が、ボクに殴り掛かってきた。
ボクは格闘技が大好きだし、でかい相手の方がやりやすい。
大柄な奴はパンチのスピードがないから、よけられるし、急所もでかいから攻めやすいのだ。
ボクはそいつのパンチをウイービングで交わして、軽くダッキングから得意の右フックからの左ストレートのコンビネーションを見舞ってやった。
奴はもんどりうって海に転落した。
そこへどやどやと、見るからにシカゴのマフィアみたいな服装の男どもが走ってきた。
どうやら、兄弟の漁師を探しているようなのだ。
ボクは舫いだ漁船に身を隠して、次の策を考えている。
ここで、小林旭ならどうするかな・・・
石原裕次郎ならどうするかな・・・
ボクは高校生の時、赤木圭一郎が好きだったな・・・
さぁ、どうするかな・・・
こりゃ、日活のアクション路線だぜ。
なんて事を真剣に考えていたら、目が覚めちゃった。
残念。
(ボクは時々、こんなシリアスなアクションドラマを空想するのが好きだ。
空想は、どんな世界へでも行けるし、主人公にもなれる。その空想がデフォルメされて、夢になった時は最高に幸せな気分なのだ。そう、今日の朝のようにね(笑))