夜汽車の窓から月明かりの雪原を見ている
小さな民家のともし火がひとつ
あの温かな灯りの中で、人は笑顔でいるだろうかと…
北東の風が荒れ狂う山頂に立っている
容赦のない大自然が、牙を剥いてくる
山小屋に残した人は、震えて待っているだろうかと…
音がみな吸い取られたような静寂の森にいる
枝から別れた樹の葉の舞う音が響く
別れた人は、まだ泣きじゃくっているのだろうかと…
鹿島の潮がきつい洋上を帆走している
舟舷を叩く夜光虫の群れが煌めく
わずかな齟齬で傷ついた友は元気かと…
遥か雲海にジェット気流が流れている
西の国から流れ来た貿易風の甘い香り
西国の人はまだ狂おしい街に住むのかと…
突然、回想の糸がほぐれたように…
様々なシーンが、止め処なく浮かんでは消える
まるで淀みの泡のように…
そして、ふと気がついた
これまでの、ボクの人生はすべて
様々な人の存在の中で、成り立っていたのだと…
(セットしたDVDから、様々な収録画像が飛び出すように。何の脈絡のなく、見覚えのある過去のシーンが浮かび上がって来た。まるでデジャブーのように…。確かにどれも一度の記憶がある情景だ。記録の記憶装置…人間って面白い。)