仮面をかぶった男が、左手に持ったステッキ
それを振る動きに、女たちが共鳴して蠢く
どの女も仮面の下に恍惚の表情をしてる
漆黒の豹が二頭、銀色の双眸を光らせているが
全裸の女たちは恍惚の姿態をゆるめない
将に幽玄、幻想の世界
エロスの絶頂こそ死の持つ永続性なのだろうな
そんな光景を垣間見ながら、ボクは立ち上がった
外は蜃気楼のように煙る秋雨
「もういいかい…」
ボクはつぶやいて旅に出る…
そろそろ群れを離れる時だ
夜のしじまを流れる気流に乗って
憧れていた死滅回遊に出る時だ
自らの命は、自らが絶つ
これが動物の宿命なのだ
命あるものの約命と言ってもいい
祝福されて生れ、祝福されて終わる
もはや人間界では、贅沢な願望かも知れない
ボクは自分の最後に憧れている
楽しい夢にしている
さぁ、出かけよう
ふと見ると、
仮面を外した女がひとり、ボクを見つめている
自堕落な姿態で気だるい表情で…
「もういいかい…
「まぁだだよー…」
ボクは女のほうに踵を返した(笑)
(近頃、健康すぎる自分に、いささかあきれている(笑)。激しい運動をしても疲れがないのだ。ボクは自分の終わり型を、とうに決めている。だからその日が待ち愛しい。
だからこそ毎日が楽しい。その日に近づく日々だから・・・)