芳しい匂いは香りとは違う
溺れるほどの耽美な匂い
理性を投げ出す、めくるめく匂い
頽廃と背徳の匂い
夜風に漂ってきた匂いに振り返ると…
自堕落を装う湯上りの女が…
まだ濡れている洗い髪を削り
真っ赤な床に裸身を横臥する
まだ濡れて匂う黒髪
甘いバーチャルな一夜
お互いにリアルな心を隠しながら
虚飾を甘く包み込む、大人の恋…
熱き血潮を滾らせた内面を
そっと隠す、乙女のような微笑み
虚の美しさこそ恋の花
大人の恋とは、かくの如し
日本人本来の古典的な愛の世界の在りよう
恋とは虚実を使い分ける遊戯
耽美・官能・頽廃・背徳…
こんな隠し味のない恋など、餓鬼のゲームに過ぎない
そんな理屈を並べながら
湯上りの匂い立つ髪を、真っ赤な床に捧げている
美しき裸身を、そっと抱き寄せ…
ようとしたら、なんと、なんと、目が覚めちゃった
無念!残念!(笑)
(男と女の恋に、リアルを持ちこんではいけない。恋するふたりには虚飾が必要だ。
男と女の行為に、リアルな感情は似合わない。興ざめだ。
必ず、その先で破たんする。
リアルな心を包み隠して、バーチャルな甘い宇宙に浸りきるのが、大人の恋ではないかな…)