箱があれば開けてみたくなる
時代のパンドラの箱はいつも
こうして人間の好奇心で開かれてきた
原子力の箱だって、初めは科学者たちの好奇心だった
膨大な経済効果や権力や甚大な危険性など
頭には浮かべていなかっただろう
でも、原子力はパンドラの箱だった
今、ボクの前にも箱がある
ボクも、すぐに開けてしまう好奇心のかたまりだ
でも、いままで素敵な箱も沢山あった
ボクはそっと…その両手に収まるほどの銀色の箱を少し開く
ハート型のその箱からは、心臓の鼓動のような音が…
誰の鼓動なのか…
姿 形は見えないが、声がピアニシモのように聞こえる
香りがゆっくりアンダンテでボクをくすぐる
記憶のある香り…
遠い記憶は、なかなかディテールが頭脳の装置から出てこない
時の流れは見えないけれど
あの日の景色が心に映る
野生と本能…
そこに知が絡んだアーティストがいた
社会を離れ、魂と自由に遊ぶ遊行…自堕落…
音楽は静寂と音の融合
無の中にある有を感じること
静寂を如何に感じさせるかが音楽家の才能だと…
アーティストは言っていた
消える命と残された命
その命もやがては消える命
そのアーティストは、この天空の束の間の違いに
そっと消えて逝っちゃった
ボクは、箱に頬笑みを詰めこんで蓋を閉めた。
(このアーティストはボクの親友だった。よく一緒に音楽の
イベントもやった。けれどふっと風に吹かれるように居なくなった。
こんな素敵な箱もあるから、開けるのをやめられないのだ♬♫♬)