河村シゲルの夢か現か日記

夢は自分自身で創る芸術作品、脚本・演出・セット・キャスティングなど全て1人で担当してます。「無意識の思考を意識に伝えようとしているのが夢」だと、あのフロイトが言っています。ボクは最近、夢を毎日見ています。だからもう一人の自分探しの旅のつもりで夢日記を書き続けることにしました。

「もういいかい?」友が聞いた。暑い夏の夜だった。

夜。

スーパームーンに照らされた沖には、ウサギの飛び交うのが見える。

低気圧が通過したばかりなので、海鳴りがまだ残っている。

誰もいない海の家。

後姿の男。

それが誰だかは、分かっている。

不死身のマリオ。

でかい交通事故で背骨を折ろうが、刃物で腹を刺されようが、騙されて億の借金をかぶろうが、瓢々と生きた男。

マリオが呟いた。

「もう、いいかい」

水分の多い、生あったかい夜風が、さっと一陣した。

ボクは、その返事を返さぬまま、波打ち際へ歩いた。

波間に浮かぶ、ちぎれた海藻が不図、眼に留まる。

デラシネ…根なし草・・・

そんなラディカルな生き方は、マリオもボクも似ているな。

いつも風とケンカばかりしている人生だ。

「ナチョメンドサ」

ボクが子供の頃から使っている、おまじないの言葉を潮風に呟いてみた。

そして、マリオに大声で叫んだ。

「まぁだだよー!」

振り返ると、マリオの姿も、海の家さえもそこにはなかった。

ボクは大都会の交差点の真ん中に立っていた。

(朋友マリオが、真夏の夜中に自死してから、もう何年たったのだろう。

人の後ろを歩くことが嫌いなチャレンジャーだった。そんな処がボクと似ていて朋友と呼べる奴だった。真夏の蒸し暑い夜には、未だにボクの前に現れるナイスガイだ。)