電車に乗っている。
二両編成の知らない電車だ。
江ノ電?かとも思うが、窓の外の景色が違う。
各駅に停車するが、駅名もまるで分からないのだ。
駅名のプレートを見ても、一瞬で忘れてしまう。
東京都内かとも、岩手の三陸鉄道かとも思うが、どこか違う。
夢の銀河鉄道のようでもあるのだった。
目的地に近くなる頃、その電車はなぜだかバスになっていた。
バスはそこそこ乗客がいて、ボクは立って吊革につかまっている。
バスが、どこかで見たような街の中を走る。
ここいらに、バロンと言う名の喫茶店があるはずだと思いだし、目を凝らせて探す。
ボクの長兄である弘栄兄さんに、子供の頃、連れて行って貰ったバロンと言う名の店が、この辺りにあるはずなんだ。
バスを降りると、人だかりがある。
中年の白人の女性が二人、道を尋ねているらしいのだが、誰も言葉が分からないのだ。
その白人の女性たちが、ボクの所へ来た。
「ベルステヘン ジィ ドイッチェ?」
と、聞かれたので、
「イッヒ・バイス・ニヒト」
と、答えたら彼女たちが大笑いした。
「ウーバンデンベルゲン、アウフ デア バンデルン・・・・・」
ボクはカール・ブッセの「山のあなた」の一節を得意顔で聞かせるのであった。
(夢の中でドイツ語を喋ってることに、驚く。「バロン」は既に逝去されたボクの兄が、可愛がっていたシェパード犬の名前なのだ。なんだかドラマチックな夢で得した気分満点!)