秋の海へ来た。
夏の狂おしい程の喧騒が去った、秋の海はいい。
十六夜の月明かりが、漆黒の海面に一筋の道を創っている。
ボクは、その月の道に泳ぐ。
いつしか月光は、海中に潜行しボクも海人になる。
ボクは左手に銛を握り、皮のパンツを履いている。
大好きなポセイドン風なのだ。
ふと見ると、海底に眩い光を放つものがある。
その壮大な光の螺旋に飛び込む。
その光源は、美しい曲線を見せて横たわっている裸婦・・・
全裸の両脚には、ストッキング・・・
将に、エロティシズムの装い・・・
エロスの芳しき極みを、醸し出している。
美しい乳房が潮にたなびいている。
濃いアイラインの瞳が、気だるそうにボクを見つめている。
ボクの五感は一斉に反応した。
ホメロスの叙事詩、オデッセイア・・・
これが、あの竜宮と言う世界なのか・・・
ボクは、エロスの海底に向かって、真っ直ぐに潜行した。
(なんだか素敵な幻想の世界に遊べたけれど、フィナーレが思いだせない。
あまりにも陶酔の極みで、一瞬にして消去されたのだろうか・・・。そういうことにしておこう。ボクは時々、こうして幻想の世界で遊べる。だから、眠ることが何よりの楽しみなのだ。)