ボクの肉体がまだ、人間としてのアウトラインがない頃・・・
ボクの精神はすでに、温かな交信を始めている。
瞬時に魂が融合してしまう女性に出会ったのだ。
それが、母だった。
ボクは母の愛をむさぼった。
愛されることに貪欲な少年期だった。
ボクの世界に何が起ころうと、台所の母の後姿に安堵した。
子供にもエロスはある。
母は将に、ボクだけのエロスの存在だった。
ボクは今、真夜中の大都会の片隅に座って、そんな想いに耽っている。
あれから・・・
母の愛に似たものを、年下の女性に求めた。
瞬間に身体が交信してしまう女性に出会うこともある。
しかし、いつも何かがボクを引きとめる作用をする。
そのドラマはいつもプロローグだけ・・・
エピローグまでは届かない。
夜空に月や星を求めて、幻想の世界を宇宙に広げる。
シュールの画家、ローラン・ブリジョーの描く「海の香り」・・・
漂う乳房に静謐なエロスの極みをみる。
乳房はいつも、母のエロスとの混濁・・・
男の二律背反・・・
ボクは・・・
独り悩むボクを見つめている。
(このような思考は、ボクの現実の世界ではない。しかし、ボクの体内には潜在しているのかも知れない。男が母に求める愛は究極のエロスだ。
夢は羞恥や見栄や隠匿を払いのけてくれる。愉しいもう一つの世界なのかも知れない。)