テレビ局舎の廊下を歩いている。
なんだかペラペラの安普請・・・
赤坂のTBSだな。
テレビ各局のビルは、外観はいいのだけれど、内装はどこも安普請なのはなぜだろうね。
なんて、考えながら歩いていると・・・
後ろから、数人が走り寄って来る足音・・・
振り向くと、アシスタントディレクターの若者たちだ。
必死の形相で、ボクに向かって叫んだ。
「すいません、台本いただけますか!」
「台本?なんの?」
「昼帯の報道特集です」
「ボクの担当は、いつだっけ?
「今日ですよ!」
「えーっ!ウソだろ?」
「嘘じゃありません!もう放送10分前です。」
「出演者はもう、スタジオに入ってます」
「リハーサルやろうにも、台本がないので、途方にくれてます」
こんな時、ボクはあまり驚かないし、じたばたしない。
今まで放送生活50年、それなりの修羅場は何度も越えて来た。
スタジオに入ると、田原総一郎さんと大橋巨泉さんと、安藤優子さんがいる。
皆さんが、不安そうに一斉にボクを見つめる。
「えーと、この番組なんだっけ?」
ボクはすっかり番組のタイトルも、コンテンツも忘れちゃっている。
プロデュサーと、ディレクターが腰を抜かして泡を吹いている。
放送局の営業部員たちが、真っ青になって震えている。
スタジオ中がパニックになっている。
「おもしろい!」
ボクは、こういう異常な状態で番組を作りたかった。
「おーい、ADさん、オンエアー行こう!カウントとって」
「田原さん、巨泉さん、安藤さん、テレビと言うメディアはリアルタイムが命です。」
「この番組は、只今から新番組、リアルタイムショー、ザ・ハプニングです」
「はい、本番5秒前、4,3,2,1、キュー!放送が始まりました!」
「出演者の皆様、よろしくね!」
田原総一郎と大橋巨泉と安藤優子が、突然狂ったように踊りはじめた。
ラップと盆踊りのミックスみたいなものだ。
次は、3人の水着ショー・・・
これがエログロ可愛いくて、吐きそうだ・・・
番組スタッフやテレビ関係者は悶絶している。
テレビカメラがリアルにこれを、映し出している。
「今日は、Youtubeに勝てそうだ」と、ボクはにんまりした・・
(長く放送に携わっていると、本番日を間違えたり、台本書き忘れたりと言うのは、たまにある。ボクにもそんな修羅場が何回もあったなぁ。若いころは夢にまでうなされたけれど、今はどうってことない。テレビはリアルタイムのメディアさと、腹をくくっている)