波の背中に乗って遊んでいる。
子供の頃から、独りで波と遊ぶのが好きだった。
沖からやって来た波が、浜辺で砕け散る少し前・・・、
波は必ず、柔らかく盛り上がり、ボクの身体を包み込む。
そう、今がその時だ。
ボクの身体は、まるで宇宙空間のように、ふんわり天空に浮かぶ。
ボクは、安心して目を閉じて、束の間のまどろみに委ねる。
ある時は、キスリングの描く「横たわる裸婦」に抱きかかえられるように・・・
ある時は、トゥルイユが描く「オ-・カルカッタ」の裸婦の背にもたれかかるように・・・
波の背は、美と幻想と陶酔のボクの遊園地。
都会に居る時は、理性という意識の服にひっそりと隠れて・・・
時にはボクにさえ、その存在を忘れられているエロス・・・
波の背では、意識の束縛をぶった切って、のびのびと自由自在に空想の中に身を置ける。
ボクは、子供の時から、こうして波に揺られて空想するのが大好きだった。
波の背は、何処へでもボクを誘ってくれた。
そして今、ボクはまだ波の背に抱かれて、空想の宇宙に遊んでいられる。
この世界の中では、ボクは単なる石ころに過ぎない。
でも、石ころにもポテンシャルはある。
何処へでも、自在に転がって行ける石ころなんだ。
ローリングストーン・・・
ボクは何処へたどり着くのやら・・・
波の背に揺られて、空想の遊園地にもうしばらくいようかな・・・
(エロスが意識の呪縛から解放されるのは、夢の中だ。夢の中のエロスは自由自在に転げ回る。まさにローリングストーン・・・。そんな夢を見た朝は、小さな罪の懺悔とスリリングな快感に包まれている。そう、今日の朝のように・・・)