だだっ広い会議室・・・
ディレクターの末盛さんがいるから、ここはNHKだな。
放送作家のどんどんクジラ塚田茂さんも隣にいる。
そうだ、今日は紅白歌合戦の制作会議だった。
あれ?末盛さんも塚田さんも亡くなったんじゃなかったっけな。
まぁいいや、ここにいるのだから・・・。
「ところで、今年のグランドテーマですが・・・」
進行役のCPが会議の口火を切った。
「その前に・・・」
と、ボクが発言した。
「紅白歌合戦は、将に世紀末状態です」
「司会者はへたくそ・・・」
「カメラのカット割りは素人同然・・・」
「構成もスケール感がなく、せこすぎる・・・」
「なぜ、従来の王道をいかないのですか!」
ボクは、畳みかけて発言している。
「更に、出場歌手の選曲・・・」
「なぜ、歌手とそのプロダクションの言いなりになるのか・・・」
会議室が凍ったように、冷たい風が吹いている。
暖かいのは、燃えているボクだけだ。
「もうひとつ、決定的に止めて頂きたいことがあります・・・」
「それは、フィナーレに藤山一郎さんと全員で唄う(蛍の光)です。」
「あの歌、止めましょう、いや、唄うべきではありません」
会議室の全員が、ボクを凝視している。
「蛍の光は軍歌ですよ。4番目の歌詞、ご存知ですか?」
ボクは4番の歌詞を唄い始めた。
千島の奥も 沖縄も
八洲の内の 守りなり
いたらん国に 勇おしく
つとめよわがせ つつがなく
「つまりこれは、北方領土と南方領土を守る兵隊たちを、見送る歌なんですよ」
その時、ボクの夢の画面がぐちゃぐちゃに乱れて、黒みになってしまった。
(なつかしい番組会議の夢だった。確かにこんな会議で、こんな発言をして。
結局ボクは、会議室を飛び出した。当然、首である。その日からNHKからは仕事のお呼びがない(笑)追伸 ボクは軍歌は嫌いではありません。)